エッセイ「思いがけない3年後」

車窓から見えた淀川の画像。
車窓から見えた淀川の画像です。

思いがけない3年後

 

占い館に出演する日は少し早目に家を出る。

今朝も少し早目に地下鉄に乗った。


車内は通勤客で混み合っている。

季節はすでに夏休みで女性の服はカラフルだが、男性の方は半袖のサラリーマンも居るにはいるが、この暑さでもちゃんと長袖のダークスーツを着ている人も多い。


ここは日本の大阪なのだ。

そう思ったら不思議な感覚が私を襲った。

 

30年前に20代だった私は、50を過ぎて占い師となり大阪で暮らしていてこんな満員の通勤電車に揺られているなどとは想像すらできなかった。

それを思うと、人生のその時その時の思い込みが外れて、それとはまるで関係ない場所に居る自分が何だか可笑しい。


人生はなんと面白いのだろう。

 

20歳で広島の市電を運転していた頃は、定年までの40年をずっと電車を運転する自分の姿を思い描いていて勤めあげる覚悟もあった。


その後東京で大学に通った頃は、講師を務めながら大学に残る自分を想定していた。


21年住んだドイツでも帰国する間際まではドイツに骨を埋めるつもりであった。


そして、

今はこのまま広島に帰らずに大阪で暮らすのも悪くないなぁ~と思っている。


どうやら私は人生の時々で住む場所を「ここが私の終の棲家だ」と早々と思い込むクセがあるようだ・・・(;^王^)

 

そんな思い込みが外れても私は期待がはずれたとガッカリすることはない。むしろ、そういう思いがけない人生の変化を歓迎し、自分が右往左往したことも面白がる習性がある。この辺りがフーテンの寅さんに似ていると言われる所以である。

 

とはいえ、すべての思いがけない変化を歓迎してきたわけではない。


たとえば私は若い頃から「借金だけはしないでおこう」と決めていた。

その思い込みは海外での事業の失敗で無残にも崩れ去ることになる。


この時はかなりのダメージだったが、その辛かった時代も今はなつかしいし思い返せば最も私の内面が変化した時代でもあった。


安定した会社で生真面目に働き借金などには縁のない若者だった私の30年後は借金まみれで何の保障もないその日暮らしの妖しい占い師だったということになる。

 

そして私はその変化を気に入っている(^王^)ノ

 

30年後の未来が思いがけない結果だったのなら・・・、

3年後だって分からない。


大阪でも広島でもない「思いがけない場所」で暮らしている自分を可笑しがっているかもしれない。

 

「安定」や「借金しないこと」や「社会的地位」を守っていた私がその価値観を大きく変化させたように、3年後の私はいったいどう変化しているのだろうか。

 

ふと外を見たら列車は地下に潜る前で、淀川の鉄橋をゴトゴトと渡っている。

川面が青空を映して流れていた。


大阪は今日も暑くなりそうだ。

 

占い師☆羅王