これがボクのパパとママだよ。でも二人は結婚してないんだ♪
数年前のことだ。
村の広場で友人と立ち話をしていたら、
その友人の知り合い家族が通りがかった。
こんなときはドイツでも「やあ、こんにちは!」と挨拶を交わし、
「どこ行くの?」「ちょっとブラブラ散歩がてらのショッピングにね」とか
「この間は楽しかったね♪」「じゃ、また一緒に呑もう」などと
何気ない話をする。
そのときは、4~5歳の金髪の男の子が私に話しかけてきた。
あのね。これがボクのパパとママだよ。
でね、パパとママとボクは一緒に住んでるけど、パパとママは結婚してないんだ。
(ええっ?そうなんだ・・・。)と内心思ったが、
ここで私はその男の子からパパとママの方に(そうなんですか?)と目顔で問い掛けようとする衝動を抑えた。
誰と同棲していようが、
誰の婚外子を生もうが、
それぞれの自由であると頭では理解している。
ドイツでは他人のプライベートに過剰に首を突っ込む者は嫌われる。
「えっ、なんで?どうやって?」などと根掘り葉掘り聞き出すのは失礼なことなのだ。
そのときの私は同棲や婚外子なんてありきたりで何の興味もないという顔をして、その家族連れに「素敵な一日を♪」とニッコリ挨拶を交わして別れを告げた。それから振り返って友人に問いただした。
友人の説明によるとあの母親はママ友で、カップルは近所の集合住宅の同棟に別々に住んでいて籍は入れてないという。彼らの間にはあの金髪の男の子と最近生まれた赤ん坊があり、母親はバツイチで父親の違う年長の子供もいる。
私は当然の疑問を投げかけた
「なんで籍を入れないの?」。
「そりゃ、元夫からもらう養育費と3人分の子供手当てと母子手当で充分生活できるからでしょ」
友人の回答は簡潔明瞭だ。
しかし、ホントにそれでいいのかなぁとも思う。
こういう事実婚を営むカップルは都会ではもう珍しくないそうだ。
そして、今やこんな田舎の村にだって存在する!
ドイツで男性が籍を入れたくない最大の理由は離婚の大変さにある。
日本でも離婚は結婚より何倍ものエネルギーが必要だというが、ドイツはもっと大変だ。
なぜなら結婚とは法的な契約でありその契約を破る離婚となると、後の財産分与や養育費、親権などすべてが裁判所を通して法的に処理されるからだ。養育費を払わない元配偶者は違法行為なので強制的に執行され、財産分与を拒めば法的な制裁措置を受けることもある。
なのでドイツ人男性がそう簡単に入籍したくないのは解る気がする。結婚しなくても、ドイツではシングルマザーをサポートする制度がしっかりしているし、それが社会的偏見で差別されることもないのだ。
籍を入れるとか入れないとかいう問題は、もう過去のものでそれも欧米化の一面であるならやがて日本でも一般的になるのだろうと思う。
ところで友人の夫はバルカン半島の国籍を持つ働き者である。
ドイツでは夫婦とも外国人ということになるが何の差別も受けることなく暮らしている。
うちの夫がちゃんと結婚という形を大事にする人であり、先進的なドイツ人でなくってよかったわ!と友人は言った。
だが、たとえ友人が現在の夫と離婚したとしても、ちゃんとドイツの社会保障の恩恵を受けて子育てと教育ができる。
それは、その先進的なドイツ人のお陰じゃないのか?と私は思った。
羅王